平成26年11月 理事会あいさつ

本日は、ご多用のところ、理事会にご出席をいただきありがとうございます。

理事の皆さまにおかれましては、社業の運営と発展のために日頃より深いご理解とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、本日の理事会でご審議をお願いいたします案件は、「資金の借入」及び「不動産の処分」でございますが、まずは最近の内外の情勢と赤十字の取組みについて、簡単にご報告をさせていただきます。

目下、国際的に最も関心が高い人道危機の一つは、本年2月から西アフリカを中心に感染が広がっているエボラ出血熱であります。1976年に最初の発症例が報告されていますが、今回は人口密集地で発生したこともあり、これまでで最大規模の感染拡大となっています。現在、感染者は1万4000人に達し、そのうち医療従事者を含む5000人以上が死亡しています。

感染地域は近年まで長らく紛争で荒廃し、医療のインフラも整っていない上に、亡くなった人の体を素手で洗い、死者との別れを惜しみ、丁重に埋葬して初めて天国に送り出せるという習俗があり、そのことによっても感染が広まったと考えられています。地元の人々を納得させ、協力が得られなければ、国際救援が実を結ぶことはありません。外国人が病人を連れ去り、亡くなっても遺体も帰ってこなければ、善意の協力もあだとなるでしょう。

現在遺体の埋葬はほぼ100%、訓練された地元赤十字社のボランティアの手で行われています。国際赤十字・赤新月社連盟は、現在16か国でエボラ対応の活動を展開しており、9500人以上のボランティアにエボラの感染防止策に対する専門的な訓練を行っており、その数はますます増えております。そして、これまでに延べ190人に上る医師や看護師など外国人スタッフが西アフリカに派遣され、 エボラ治療センターの増設など現地医療体制の拡充、こころのケア、食糧・生活物資支援など感染者・家族への支援などの活動を行っています。

そのために約76億円の援助を国際社会に求めています。赤十字ボランティアの中からは一人の感染者が出ましたが、幸いにも回復したと聞いております。 日本赤十字社では、5月と8月にリベリアに医師1名を派遣したほか、5000万円を超える資金援助を国際赤十字・赤新月社連盟に行っていますが、感染者の急増が伝えられているシエラレオネにある国際赤十字エボラ治療センターに派遣する人材の養成、確保を進めています。

日本国内では、感染症の疑いがある人または発症者は、まずは全国に 3カ所ある特定感染症指定医療機関に入院することとされ、その一つに成田赤十字病院が指定されています。また、それら3つの医療機関を補佐するために、全国で45の病院が第一種感染症指定医療機関に指定されており、そのうちの6つの赤十字病院では、日本でエボラ等の感染者が出た場合に備え、市や県、保健所などの関係機関と連携し、準備を行っています。

更に海外では、シリア内戦が4年目に突入した中東地域の情勢が 一段と混迷の度を深めています。シリアの国内避難民は約650万人、周辺国への難民は300万人に上ります。イラクでは、各勢力の間で治安の悪化に伴い、国内の避難民は11月の時点で190万人に達しています。

一方、7月初旬から50日間続いたパレスチナのガザ地域で多くの市民が巻き添えとなり、およそ2200人が命を落としました。 これらの中東地域に対して、国際赤十字全体で約642億5000万円の予算で対応しています。

このような状況を受けて、日本赤十字社は、ヨルダン、イラク、レバノンに医療要員を延べ5人派遣したほか、 国際赤十字を通じて、これまでに1億5,000万円相当の資金拠出を行ってきました。この資金は、食糧及び救援物資の配布や保健医療サービスの提供、仮設住宅の提供等に活用されています。

赤十字にとって最大の試練は、国際人道法で定められている諸々のルールが守られず、救援に携わるボランティアやスタッフや施設が 攻撃の対象にされたり、救援活動が妨害される事態がしばしば起きていることです。シリア赤新月社のボランティアの犠牲者はすでに40人に上っています。同じような状況は同じく紛争下にある南スーダンや中央アフリカでも見られます。

一方、国内に目を向けますと、本年度上半期には、全国各地が台風や集中豪雨などに見舞われました。記憶に新しい広島県の大雨による土砂災害や御嶽山噴火災害では、日本赤十字社は各地から救護班を派遣するとともに、救援物資の配分や、被災者やその家族に対するこころのケア活動を行いました。

近年の気候変動により、国内外で大規模あるいは突発的な災害が増加し、被害の状況も変化しています。そのような変化にどう対応するかは、赤十字全体にとっても大きな課題であり、来年仙台で開かれる国連防災世界会議の場でも議論されることになります。

国際的には緊急の対応と同時に、いやそれ以上に災害に強いコミュニティーの体力づくりが話題になると思います。その中心を担うのは草の根レベルに展開するボランティアのネットワークであり、その強化が望まれています。

日本赤十字社は全国に約220万人のボランティアないし約3,000の奉仕団を持っており、その効果的な動員が日本赤十字社の災害時の 貢献を一層強めることになると確信をしております。

以上ご報告申し上げ、理事の皆さまの、より一層のご理解とご支援を賜りますようにお願いし、私からの挨拶とさせていただきます。

日本赤十字社 社長 近衞忠煇