平成26年3月 赤十字飛行隊創設50周年記念式典

 このたび、赤十字飛行隊が創設50周年を迎えられました。心よりお祝い申し上げると同時に、今日迄の赤十字の活動に対する多大なご協力に深く感謝いたします。

 赤十字飛行隊が結成されたのは、1963年11月3日ですが、それから間もない東京オリンピック直前の翌年の夏には、新潟地方を襲う大きな地震がありました。もちろん、上越新幹線も高速道路もできる前のことです。

 そして各地で陸路が寸断され、輸送が困難を来たす中で、緊急に求められた血液を東京から届けてくれたのが赤十字飛行隊でした。

 その数カ月後に日赤に入社した私は、その時同行した先輩の職員から、セスナ機で三国山脈の稜線をギリギリかすめて飛ぶ恐怖の体験の後、新潟に着陸した時には大きな使命を果たした安堵感が一気に込み上げてきたと聞かされ、赤十字と飛行隊への思いを熱くした事を今でも思い出します。

 そんなこともあり、調布の飛行隊を時々遊びがてら訪れることになりました。飛行隊は、夏場には湘南の海岸のパトロールをしており、私は何回か同乗させていただきました。当時のパイロットの中には特攻隊の生き残りだった方もあり、海面すれすれまで急降下して溺れかけている人目がけて浮輪を投下する作業は、きわめてスリリングなものでした。

 地域によって、赤十字飛行隊の活躍の機会は異なります。とはいえ、日本赤十字社が参加する各地での大規模な救護訓練に、常に花を添えてくださっているのは飛行隊です。それを私共は誇らしく思っていますが、隊員の方々からはもっと出動の機会を作ってほしいという要望があるとも聞いております。

 私は暮に、20数年振りの大きな台風に見舞われ、広域にわたって甚大な被害が出たフィリピンに行き、ヘリで被災地を視察しました。多くの島からなり、通信もアクセスも困難となった被災地の状況を把握し、緊急の救護に必要な人材や資機材を運び込めるのは空からしかありません。

 フィリピンの赤十字はヘリを数機チャーターしていましたが、隣国のインドネシアの赤十字は、所有しているヘリ一機をパイロットごと提供し、感謝されていました。

 空からしか救援ができないような大きな災害が起こらないことを願うばかりですが、仮に起きた時に頼れる飛行隊を持っていることが、私共関係者はもとより、広く国民にとっても大きな「励み」と「安心」につながることを信じて疑わないものであります。

 最後になりますが、改めて本日表彰を受けられる日本飛行連盟をはじめとする関係団体の皆さまに、赤十字のさまざまな活動へのご協力に対し深く敬意と謝意をお伝えすると同時に、これを機に、赤十字飛行隊の皆さまと一層手を携えて、赤十字の人道的使命の達成にさらに力を尽くしてゆくことをお約束し、挨拶といたします。

日本赤十字社 社長 近衞忠煇