平成25年全国赤十字大会あいさつ

 世界赤十字デーである本日、日本赤十字社名誉総裁皇后陛下、ならびに名誉副総裁秋篠宮妃殿下、常陸宮妃殿下をお迎えし、日頃から赤十字を支えて下さっている多くの皆さまとともに全国赤十字大会を開催できますことは、大きな喜びであります。

東日本大震災からの教訓

 「災害は忘れたころにやって来る」と古くから言われてきました。そして確かに、東日本大震災は忘れたころに東北地方を襲い、未曽有の被害をもたらし、日本赤十字社では日本全国から6カ月にわたり延べ9000人の職員を派遣して、救護に携わりました。

 それから2年余り、被災地の本格的な復興への道程は程遠く、今もなお多数の被災者が、元の生活に戻れる見通しの立たないまま不自由な避難生活を余儀なくされています。だからこそ私たちは、一瞬たりともこの災害を忘れることは許されません。

 一方、この悲劇は世界中の人々の心を動かし、わが国にはこれまで経験したことのない多額の支援が寄せられました。悲劇から人びとの間に同情と友情が生まれ、また国と国との間に友好を育んだ例は、歴史上枚挙にいとまがありません。グローバルな時代である今こそ、一層「情は人の為ならず」との言葉が大切に思われます。

ボランティアの力

 さて、近年災害が各地で多発し、激化する傾向にあることに、赤十字は大きな関心を寄せています。なぜならば、災害によって多くの国が貧困や人口の移動を引き起こし、生活環境を破壊し、社会の緊張を生むからです。時には、政治の混乱や紛争にまでに発展します。

 被災者の生死を分ける緊急の救援活動は、当然おろそかにはできません。その先には、将来の災害に備えた、より強い社会の体力づくりが求められます。赤十字は、救護から復興へ、復興から開発へという一連の流れを後押しすることを方針としています。

 草の根でそれを支えるのはボランティアです。東日本大震災の後も、行政の手はしばらくは被災者の元に届きませんでした。その隙間を埋めることができるのは、被災者の近くにいるボランティアしかありません。ボランティアの力を、いかにより良く引き出すことができるかに、赤十字の将来はかかっています。

厳しい現実があるからこそ、赤十字の原点に立ち帰る

 赤十字は、戦争の犠牲者を敵味方の区別なく助けるために生まれました。その最初に創られた赤十字国際委員会は、今年150周年の節目を迎えます。

 そんな折、世界の注目が集まっているのがシリアの情勢です。2年前に始まった国内紛争のために、既に7万人以上が亡くなり、およそ144万人が隣国に流出し、680万人の国民が継続的な人道支援を必要としています。

 シリア赤新月社は、こうした人びとにすべて公平に支援が行き渡るよう、国際赤十字を始めとする国際人道機関の協力を支えに活動を展開してきました。

 

 しかし残念ながら、治安の悪化によって18人もの殉職者を出し、活動は日に日に困難を増しています。同様の状況は「アラブの春」以降、政治の混迷の度合の深まっている他のアラブ諸国にも見られます。中立のシンボルであるはずの赤十字や赤新月のマークすら尊重されない。こうした現実から、われわれは目を背けることなく、赤十字の原点に立ち帰って進むべき道を探し続けなければなりません。

日本赤十字社の役割

1888年、会津磐梯山が大噴火した時、日本赤十字社は明治天皇のお妃であった後の昭憲皇太后の直々のご下命により、設立したばかりの最初の日赤病院から小規模な救護班を派遣しました。

 その後、災害救護は時代とともに日赤の活動の大きな柱に育って今日に至っています。それが、2年前の東日本大震災での日本赤十字社の活動につながっているのです。

昭憲皇太后は、日頃から赤十字活動に格別な関心を寄せられ、1912年に、海外での赤十字の平時の事業を推進するためとして、現在の金額で3億5000万円のご寄附を賜り、これにより昭憲皇太后基金が生まれました。

 昨年、同基金が創設100周年を迎えたことから、日本赤十字社では特別募金をお願いしておりました。結果、天皇皇后両陛下からのご下賜金に、皆さまからの寄付金を加えた3億8500万円を、ジュネーブの昭憲皇太后基金合同委員会に送金いたしました。

 その結果、基金の総額は15億3100万円となり、より多くの海外の途上国の社が、その恩恵を受けられることになります。その支援の対象となる社の先をこれまで歩み、今は国際的にも模範となるべき日本赤十字社は、病院経営を始め、血液事業、看護師養成、福祉の分野で、いずれも国内で大きな役割を任っております。その役割は、少子高齢化が急速に進む中で一段と高まることは明白であります。

 時代とともに歩む赤十字は、皆さまとともにあります。皆さまの思いが活動や事業として結実する時、これからも赤十字は発展し続けるでしょう。その確信をここに皆さまと分ち合い、挨拶といたします。