平成25年3月 第81回代議員会

 本日はご多用のところ、代議員会にご出席をいただきまして誠にありがとうございます。

 本日の代議員会では、平成25年度の事業計画と収支予算をご審議いただくこととしておりますが、はじめに私からは、今後の日本赤十字社がどのような方向に進むべきかについて、私なりの問題提起をさせていただきたいと思います。

東日本大震災からの教訓~日本赤十字社の役割~

 未曾有の大災害であった東日本大震災は、私たち日本赤十字社にとっても大きな試練となり、同時に大きな教訓を与えてくれました。

 日本赤十字社は法律によって行政が行う救護活動への協力を義務付けられ、行政と緊密に連携しながら活動をすることに努めておりますが、今回のような大災害の発災からしばらくは行政からの情報提供は限られ、指示がないまま、医療救護班は自らの判断でいち早く被災地入りを果たし、医療に限らず、被災者にとって必要なことは何でもすべく奮闘しました。

 しかし、行政との連携が難しかった義援金や海外からの資金、物資、人材支援の取り扱い、奉仕団・ボランティアの活用、復興への関わり方など、反省点も数多く残るものとなりました。この大災害を通じて痛感したことは、すべてを行政頼みにできず、日本赤十字社自らの状況把握と、それに基づく迅速で的確な対応方針を定めることの必要性でした。

 災害への対応には、「自助」「共助」「公助」という三つがあり、それぞれの場面で、日本赤十字社がどのような役割を果たせるかの判断が求められます。自助のお手伝いや共助の仕組みを作る上では、草の根に展開する奉仕団に多くが期待されます。

赤十字とボランティア

 あらためて原点に立ち返ってみますと、赤十字はそもそもボランティアの団体であり、「奉仕」は世界中の赤十字が共有する7つの原則の一つとなっています。

 赤十字の創始者であるアンリー・デュナンが、1859年に北イタリアのソルフェリーノの激戦地で負傷した兵士たちの救護活動に手を染めたのは、ひたすら「助けを求めている人を救いたい」という人道的な思いでした。

 しかし、医学の心得も、活動の準備も、医薬品もなく、手伝う人も限られた中で、彼のやれることには限りがありました。その無力感が彼をして赤十字の創設を思い立たせたのでした。その4年後に赤十字は創設され、翌年には赤十字の旗の下での中立な救護活動を保護する最初のジュネーブ条約が締結されました。

 それから150年余りが経ったこの5年間に、世界各地でさまざまな記念行事が行われ、今、デュナンが生きていたら、何を思い、何をするだろうかを考えるよすがとしようとしています。今の日本赤十字社は、全国に病院を持ち、救護の人材や装備を抱え、多くのボランティアに支えられています。これらがボランティアの精神を発揮して一丸となって活動する時、やれることはまだまだ多くあると思います。

日本赤十字社の福祉事業

現在の日本では、介護難民が社会問題となるなど、急速な高齢化を迎え、高齢者福祉が大きな課題となっております。少子化に歯止めをかけ、労働力不足を補うにも、出産、育児、就労等、女性にとって不利な条件が解消される必要があります。

 各地に赤十字病院を持ち、児童、高齢者、障害者の福祉施設を運営し、多くのボランティアに支えられている日本赤十字社が、その相乗効果を生かしてこうした問題により関わっていくことができないか、私はいつも自問しています。

 平成24年4月に東京にオープンした日本赤十字社総合福祉センター「レクロス広尾」は、こうした時代に向けての一つのチャレンジでした。広尾には日本赤十字社医療センター、看護大学、乳児院、保育園が既にありました。そして周辺の住民は高齢化が目立ちます。そうした中で医療や介護や福祉といった垣根を超えて、地域住民の生活をトータルに支えることができるならば、という思いで始めた事業であります。

 皆さまの地元でも、日本赤十字社の看板でやれることがあれば、ぜひご提案いただき、お知恵をお借りできれば幸いです。

 私たちの先輩たちが築き、これまで脈々と続けてきた事業や活動は、今日も必要とされており、それらを継続することは重要ですが、激動する時代に即して、一つ一つの事業と活動を常に見直していく必要があると考えております。

高まるボランティアによる事業貢献

 日本赤十字社は本社、支部、病院、血液センター、看護師等養成施設、社会福祉施設など400を超える施設と6万人を超える職員を擁しており、事業は職員中心に運営されております。しかし、こうしたケースは例外的で、国際赤十字・赤新月社連盟の会長として世界をまわっていると、ボランティアが中心というところがほとんどです。

 日本赤十字社でも、もっぱら本業のサポーターとして位置づけられている奉仕団やボランティアの活動を正しく把握し評価をし、その上で自らの発想で生まれた多彩なボランティア活動を支援し、事業の中に組み入れることができるならば、個々の事業の社会への貢献は更に高まり、事業の規模も大きくなるでしょう。

 平成25年度の事業計画によると、日本赤十字社の社会福祉施設でのボランティア活動をNPO法人会計基準に基づき経済的に評価したところ、約2億8000万円という数字が出ました。国際的には、2009年だけで赤十字のボランティアによる救護活動の経済的価値は5000億円相当と評価されております。

 問題は、赤十字活動にサポートしてくださっている方々に、いかに参加意識を持っていただくかだと思います。社員となり、社費を払っている、寄付をしている、献血をしているなど、いろいろな形でのサポートがありますが、それがどのように社会に役立っているかが十分に伝わらなければ、サポートした甲斐はなく、同じく社会貢献を目的とするさまざまなNGOとの違いを打ち出し、競争の中で生き残っていくことはできないと思います。

広報の強化

 そのためには、広報を充実させていかなければなりません。例えば、事業の透明性を高め、説明義務を果たすことはもちろん、集めた資金でどのような事業を行い、どのような成果を上げたのか、献血によって何人の命が救われたのか、義援金は何に使われたのか、救護活動によってどれだけの人が助かったのか。

 こうした活動実績を具体的な数字を示して分かりやすく説明していくことが求められますし、そこに受益者の声が反映させられれば、更に事業や活動の意義を感じていただけると思います。

 いまは、「赤十字はよく分からないが、立派な伝統のある組織なので、何かいい事をやっていると信じて500円寄付しよう」というほど甘い時代ではありません。

 本日、ここにお集まりいただいている代議員の皆さまは、多彩な背景を持っておられ、ご自身が生活されている地域で、いま何が必要とされているのか、赤十字にできることはないのかを、一番承知しておられるはずであります。社員を代表して、ぜひ現場からのご意見をいただければと思います。

 世界にも日本にも、出口の見えない問題が山積しており、「人道」という共通の理想を掲げている各国の赤十字も、その連合体である国際赤十字・赤新月社連盟も、果たすべき役割を模索しているところです。今後の方向を見極める上で、一番のアンテナとなり、地域住民やボランティアと日本赤十字社の橋渡しをしていただけるのは、 代議員の皆さまに他なりません。

 社資募集にあたっても、時代の変化に応じたさまざまな方法を工夫をしてはおりますが、やはり地域に根差したボランティアの方々が自分の足を使って集めてくださるところには、日本赤十字社への強い支持があります。「人を助けたい」という善意の人々の絆をこれからも大切にしていくと同時に、助けた人と助けられた人との絆もより近く強く感じられるよう広報にも力を尽くしていきたいと考えております。

 そのために、地域で日ごろからご奮闘いただいている代議員の皆さまとともに、今後とも歩みを進めて参りたいとの決意を最後に申し上げ、私からの挨拶といたします。