平成24年6月 第80回代議員会あいさつ

 本日はご多用のところ、代議員会にご出席をいただきまして誠にありがとうございます。

 本日は、平成23年度の事業報告と収支決算を中心にご審議いただくこととしております。

さて、3月に開催された代議員会での挨拶で私は、東日本大震災における日本赤十字社の活動報告とあわせ、そこから得られた幾つかの課題についてお話しをさせていただきました。本日は、その教訓をふまえ、私たちが今後に向けて何をめざしていくべきかについて、考えを申し上げたいと思います。

東日本大震災の教訓から日赤が目指すこと

 今回の災害で日本赤十字社は、文字通り全社をあげて救護活動に取り組みました。全国の赤十字病院はもとより、これまでは直接関わったことの少ない血液センターや福祉施設の職員も被災地の応援に入りました。

 もちろん、救護活動は被災地での活動にとどまりません。救護班もおりました。また、被災地だけでなく、全国で繰り広げられた赤十字奉仕団や青少年赤十字による多彩な活動がありました。日本赤十字社の歴史を振り返っても、これ程多くの人々が一つの活動に力を合わせた経験は過去に例がないことでした。

 日本赤十字社は病院や血液事業、看護師等の養成、社会福祉施設の運営など、災害救護の他にも幅広く事業を展開していますが、それぞれの事業は独立しており、それらが赤十字ならではの使命を共有し、全職員が一体感を持って活動する機会は滅多にありません。東日本大震災はその機会を提供してくれました。

 そしてその結果、「いざという時に頼りになる」との印象を国民の多くが持って下さったとすれば、大きな喜びであります。

 幸いに昨年6月に行った「赤十字運動月間広報効果調査」によれば、東日本大震災に関連した日本赤十字社の活動として、「義援金の受付」と「医療救護班の派遣」の認知度は高く、調査対象者の約半数の人が、震災を経て日本赤十字社への関心、信頼、期待が高まったという結果が出ております。

しかし、日本赤十字社が組織をあげて大規模な救援活動を展開したことのみを持って、満足することは許されません。

 被災者にとって日本赤十字社の活動はどう映ったのか、義援金の寄付者の「少しでも早く自分たちの善意を役立てて欲しい」という気持ちにどこまで応えられたか、皆さまのように日頃から日本赤十字社の活動を支えてくださっている社員や寄付者やボランティアの方々に、赤十字を支援してきて良かったと、どこまで実感していただけたか等々、まだまだ検証を要することがたくさんあります。

支援者への報告、説明責任を果たす義務

 日本赤十字社に、義援金に代表されるように多くの支援が寄せられた背景には、日ごろから国民の皆さまが日本赤十字社に対して抱いて下さっている好意的なイメージがあり、それが海外にまで伝わったことが大きく影響していると思います。

 日常の一つ一つの活動と、それに取組む姿勢がいかに大切であるかを改めて強く感じております。

 今回は国内のみならず、世界中から日本に多大な支援が寄せられ、日本赤十字社はその受皿として大きな責任の一端を担うことになりました。

 こうした善意に酬いるために、私たちが何をすべきかといえば、寄せられた支援を効果的に生かし、どのように役立てたのかについて情報を提供し、納得のいく説明をすることであります。

 日本赤十字社は96の国と地域の赤十字・赤新月社等から支援を受けましたが、義援金を集めた社もそれぞれ寄付者に対して説明責任を果たす義務を負っております。そこで今回は、国際赤十字の救援の規則に則った会計基準を導入し、また、国際的な広報を充実させるために国際赤十字の専門家に応援を求めました。アメリカとイギリスでは、私自身が大口の寄付者に直接報告し、感謝を伝えることをいたしました。

 また、昨年5月に次いでこの5月にも支援国赤十字社会議を東京で開き、救援金による復興事業の進捗状況を視察してもらうとともに、国際赤十字・赤新月社連盟が実施した活動の評価を共有し、議論を交わしました。

 日本やアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドのような先進国も、近年大きな災害に見舞われる例が増えており、援助の要請をする、しないに拘らず支援が寄せられます。しかし、その場合の国際的な説明責任のあり方については、明確なルールがなく、日本の経験はその策定に資することになります。

 支援国の赤十字社会議に先立っては、連盟と日本赤十字社の共催で原発事故対策の会議が開かれ、原発保有国を中心に16社の代表が集まりました。各社が置かれている状況や役割は異なるものの、原発が存在する限り事故に備えることは赤十字の義務であるとの認識で一致し、共通の取組みのガイドラインを作成することとなりました。

国際的なルールの見直し

 今回の大震災を通じ、我々はグローバルな時代を生きていることを痛感させられました。そして、これまで我が国、また我が社にとっては関係が薄いと考えられてきた諸々の国際的なルールについて、改めて見直す必要があると考えております。

例えば、国際赤十字のイニシアチブで策定された国際救援の原則を定めた「人道憲章」や、医療、衣・食・住等、救援のスタンダードを定めた「スフィア・プロジェクト」や、海外からの支援の受入れを容易にするための法的制度的な対応を促すための国際救援法の適用といったことが考えられます。

 また、評価チームに指摘されたように、ボランティアないし奉仕団の方々に、より被災者の傍らに寄り添い、その要望を救援活動の中に反映させていただけるようにすることが必要であると思います。

大災害が起きた際は、行政も十分に機能しなくなり、真っ先に情報を集めて伝達し、自らも活動に手を染められるのは、被災地の近くにいて地元の事情にも通じているボランティアの方々だからです。

 今回の大震災で、赤十字奉仕団は被災地のみならず全国的にさまざまな活動をしていましたが、その情報を本社や支部がきちんと把握することができず、結果として奉仕団やボランティアの力を組織的に十分活用できなかったことは、今後に向けた大きな反省点となりました。

ボランティアの力

海外の赤十字社の活動を見ると、その中核を担っているのは殆んどの場合、ボランティアであり、連盟によると、2009年の1年だけをとっても、赤十字ボランティアによる救護活動は、約億円の経済的・社会的貢献に値するとされています。

 他の活動でもボランティアの協力は不可欠であり、それがなくしてはやっていけない時代です。日本赤十字社の社会福祉施設におけるボランティア活動をNPO法人会計基準を参考として試算すると、年間約2億円となります。

 シビル・ソサイエティの時代の到来が言われるいま、ボランティア活動で先駆的役割を果たしてきた赤十字が、その貢献を正しく評価し、更に推進してゆくべきであることは言うまでもありません。

 ここにおられる代議員の皆さまもボランティアであり、ボランティアの代表でもあります。世界で一番大きな人道的ネットワークと言われる赤十字の特色であり、強さは、草の根からグローバルにまで展開するボランティアが、「人間の命と健康と尊厳を守る」という使命を共有し、そのために力を合わせることができるところにあります。

 東日本大震災という大きな試練の中で、それが証明されたことを素直に喜び、これからも志を同じくする皆さまとともに歩んで行くことをお約束して挨拶といたします。