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平成23年6月 第77回代議員会あいさつ
本日は、ご多用のところ代議員会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
挨拶に先立ちまして、東日本大震災で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々へ心よりお見舞いを申し上げたいと存じます。
3月に予定しておりました第76回代議員会につきましては、震災による混乱、そして、日本赤十字社全社を挙げての救護活動を展開していたため、やむなく中止とさせていただき、文書をもってご審議をお願いしたところでございます。
ご審議いただいた議案の中には役員の選出が含まれており、私と大塚義治副社長、ともに再選していただきました。今回の大震災の対応のために再任されたものと受け止めており、責任の重さを改めてかみしめているところでございます。
東日本大震災
今回のような災害時において、日本赤十字社は災害救助法などにより、医療救護や救援物資の配布、義援金の受付などについて、国や地方公共団体と協力することとされております。それは、政府の補助機関としての赤十字の役割、言いかえれば義務を規定したものでありますが、それ以外に、人道上の満たされぬニーズがあり、それに応える能力があるならば、日本赤十字社は自発的に行動することを期待されているということでもあります。
被災された方々は、地震・津波・原発事故という、いわば三重苦というべき状況に今なお置かれています。地震発生直後から被災地と連絡がほとんどとれなくなりました。通信機能が麻痺し、我々に支給されていた防災用の携帯電話も使えませんでした。交通は遮断され、現地の行政が大きな損害を被って、被害状況の掌握ができなかったために、行政からの要請に応えて活動するという通常の救援の方法は全く通用しませんでした。
医療救護活動
そうした手探りの状況のもとで、日本赤十字社の救護班は発災当日に全国から46班が現地入りし、被災地の状況とニーズを把握しようと動きはじめました。私は発災当日、和歌山におりまして、現地入りは発災2日目になりましたけれども、そのときまでに出動した救護班は60に上っておりました。
宮城県石巻市はとりわけ被害の大きかった地域でありますが、そこでは、遠く九州から派遣された救護班が早くも活動をはじめておりました。
日本赤十字社の救護服の背中にはそれぞれの病院の名前が入っておりますが、その地名を見て被災者の方が「そんな遠方から来てくれたのですか」と感謝しておられるのを目にいたしました。全国にくまなくネットワークを持つ赤十字の連帯の力を改めて感じた場面でございました。
発災2日目には、マスコミもいまだ詳しい状況をつかんでいませんでした。そこで、地域で唯一病院機能が残った石巻赤十字病院の野戦病院さながらの不眠不休の活動を知ってもらうべく、宮城県の災害対策本部で即席の記者会見を行ったところ、それからマスコミが大挙して取材に入ったということもございました。
情報が極度に不足する中で、被災現場を巡回した多数の赤十字救護班からの自分の目で見た情報は大変貴重であり、その活動はメディアでもしばしばクローズアップされました。その上に、各地の赤十字病院から救護班が出動するとき、そして、帰ってからの報告の様子が広く報道されたことが、今回、義援金が圧倒的に日本赤十字社に寄せられていることにつながったのではないかと思います。
赤十字のネットワークを生かした活動
赤十字病院による医療救護のみならず、今回は日本赤十字社の福祉施設の職員もはじめて被災地の施設に応援に入りました。被害の少なかった血液センターの職員も救護活動に動員され、大きな戦力となりました。救護班が行った先々で見つけたニーズに応え、こころのケアや給水活動、トイレの衛生管理に取り組むなど、赤十字らしい活動も展開してまいりました。また、現地でのボランティアの活動にはいろいろな制約がありましたが、全国では6万5,000人近い赤十字ボランティアによって、募金活動をはじめ様々な活動が展開されました。
こうした活動も含め、赤十字のネットワークを生かした活動ができたと自負しております。
義援金の募集、受付
国内外から日本赤十字社に寄せられている義援金は、6月14日現在、2,399億円に達しています。他団体でも327億円を集めておりますが、それらは各県の配分委員会を通じて被災者の手元に届けることになっております。配分の基準は被災した各県が設ける配分委員会が決めることになっておりますが、今回は対象となる県が合わせて15県にも上るので、各県がそれぞれの配分基準をつくられたのでは不公平感が出て大変困ったことになります。そこで、日本赤十字社としては、合同の配分基準をつくる委員会をつくってほしいと政府に要請し、それが実現して、第一次配分の基準と金額が4月8日に決定をいたしました。しかし、いまだに多くの行方不明者がおり、罹災者証明書を発給する現地の行政窓口が被災していることから、被災された方々のお手元に十分届いておらず、様々なご批判を受けており、大変心を痛めております。一番の問題は、日本赤十字社は募金だけではなく配分にも責任を負っていると思っておられる方が世の中には多いことであります。各県の配分委員会のメンバーには日本赤十字社も加わっており、配分のあり方について様々な意見を反映させて意見を述べて行くと同時に、義援金の取り扱いに対する理解を広めるよう努力したいと考えております。
このような状況の中で、被災者のもとにできる限り早く義援金を届けるために、6月6日に第二回の義援金配分割合決定委員会が開催されました。日本赤十字社では、お預かりしている義援金を、一部留保分を除き、各被災県の被害状況に応じて送金をいたします。その旨、今日夕方、記者会見をして発表する予定になっております。各県での配分に当たっては、各県の義援金配分委員会において第一次配分の基準に準じて対象と額が決定され、被災者に配分されていくことになります。
海外赤十字社からの協力
近年の災害は国際的にも増加、大規模化、複雑化の傾向にあり、アメリカのハリケーン・カトリーナやオーストラリアの水害、ニュージーランドの大地震など、先進国でも自力のみでの対応がかなわず、海外の支援を受け入れざるを得ない状況になってきております。
東日本大震災も、これだけの大きな災害であれば当然国際的な関心が高く、世界中で支援の輪が広がっております。通常、海外で大きな災害が起きたときには、日本赤十字社に多くの救援金が寄せられ、その資金を使っていろいろな事業が行われます。3年前の中国四川省の大地震などには、多数の住宅、学校、医療施設の復興が日本赤十字社の手で行われ、この5月に復興を記念する行事が四川省で執り行われました。私も出席をしてまいりました。
今回は、いわばその裏返しであり、各国の赤十字社は、日本赤十字社が彼らの支援をどう効果的に生かすかに注目をしております。
今回、各国の赤十字・赤新月社を通じて寄せられた救援金は約300億円に上っております。その活用法としては、今回甚大な被害を受けた宮城県石巻市を中心とする地域の医療機能の復興のための支援や、岩手、宮城、福島など8県が建設する仮設住宅に入居する約8万世帯を対象とした洗濯機や冷蔵庫などの「生活家電セット」の提供などが予定されており、既に約2万5,000セットが入居者のもとに届いております。
今回は、日本の状況がインターネットなどを通じていち早く世界中に報道されました。我が国がはじめて経験する国際化とインターネットの時代を象徴する国際的な災害であったと感じております。そうであったがゆえに、いろいろな不備な点も露呈することになりました。
例えば発災直後から、医療、給水等の専門チーム、救援物資、資金等、海外からの支援の申し入れが次々とありましたが、日本赤十字社は方針として、資金以外の援助は海外から受け付けないと決めました。ところが、日本政府がレスキュー、医療等のチームや救援物資を受け入れたために、日本赤十字社がなぜ受けないのか、海外の方々に理解していただくのは大変なことでありました。
そこで、日本赤十字社では、発災後一〜二週間の時点で主たる支援国の赤十字社の代表に現地入りしていただきました。現地での活動の困難な実情を知っていただき、そして適切なアドバイスをいただき、彼ら自身の口から日本の現状と日本赤十字社の活動、あるいは考えを語ってもらうということがねらいでありました。恐らくこれを行わなかったならば、日本赤十字社は海外の赤十字社から厳しく非難されたことでありましょう。
災害時における広報的視点は大変重要であり、現在も続く原発事故の対応に対する海外からの根強い不信の底にあるのは、海外に向けたわかりやすい情報をタイムリーに発信する能力と、その仕組みが不足していたためであったのではないかと考えております。確かに意図的な情報操作はなかったのかもしれませんが、情報が小出しにされ、対策が後手に回ったことで、より悪い事態を想定させ、国内のみならず、広く海外においても風評被害という形であらわれました。正確な情報の把握とそれを迅速に公表していくことの重要性を再認識したところであり、その点では、発災直後から派遣されてきた国際赤十字・赤新月社連盟の広報担当者の協力は大きな一助となりました。
赤十字ボランティアの活躍
今回の大震災においては、当初、ボランティアの活動に多くの制約があったと先ほど申し上げました。これは、ボランティアの活動が目立ち、ボランティア元年とも名づけられた阪神・淡路大震災のときとは対照的でありました。日本赤十字社は、阪神・淡路大震災の経験をもとに、ボランティアのリーダーとなる防災ボランティアを養成してまいりましたが、みずからが被災者となった状況下で地元のボランティアが活動するのは困難を極めました。
しかしながら、そのような中でも、地域赤十字奉仕団が被災者のための非常炊き出しを実施し、支援物資の仕分け、被災地への救援物資の搬送や配布、NTT衛星電話設備の設置支援など、広範囲にわたる活動を実施いたしました。現在は、被災地にボランティアセンターが立ち上がり、本社からボランティアを運ぶシャトルバスを運行し、津波被害に遭われた民家の泥かき、写真や思い出の品の洗浄活動に参加をしていただいております。
一方、被災地以外では、全国で延べ6万人を超える赤十字ボランティアが、県外避難者に対する食事会や情報交換の場としてサロンの設置等様々な活動をしており、今だ9万人余の避難者に対するボランティアニーズはまだまだ続くものと思います。
今回の災害では、数多くの赤十字奉仕団や青少年赤十字が活動いたしましたが、組織立った活動を行うことができなかったという課題も残しました。全国に広がる赤十字奉仕団や青少年赤十字が被災地で、また、全国的にこのような大災害時にどのように活動すべきかなど、今後、見直すべき点は多いように感じております。
私たちにできること
一昨年の赤十字思想誕生150周年にあたり、国際赤十字では関係者の一人一人が、「今、アンリー・デュナンが生きていたなら何をするか」を考えてみようと訴えました。今、まさに私たちはその問いを突きつけられているといえると思います。
震災直後に現地入りした際、悲惨な様子を目の当たりにして、デュナンが戦場で感じたであろう無力感を私もまた味わいました。同時に、「とてもじっとしていられない」「何かできないか」という気持ちに強く駆られました。全国から使命感に燃えて駆けつけた救護班のメンバーたちも、同じ気持ちであったと思います。
国際赤十字・赤新月社連盟が定めた「2020年の戦略」でも、「もっとできないか。よりよくできないか。より多くできないか」と、絶えず自問しようと呼びかけております。今回の大震災で日本赤十字社の演じた役割は大きかったと思います。しかし、これだけの大きな災害で多くの被災者がおられ、ニーズがあるときに十分ということは決してあり得ません。
未曾有の大災害で想定外のことが多発したのであれば、対応もまた想定外の進取の気概に富んだものでなければならないでしょう。そこに日本赤十字社の将来がかかっていると言っても過言ではなく、内外の多くの人々が赤十字にそのことを期待していると思います。
本日、ご参集いただいた皆様にも、未曾有の大災害の中で日本赤十字社ができることは何か、ともに考え行動していただくことを最後にお願いして、私からのご挨拶といたします。ありがとうございました。
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